今回は心理学の本の紹介です。ビジネス、集客、ライティングと心理学なんて関係あるの?と思われるかもしれませんが、ビジネスも集客もライティングも全てコミュニケーションの基盤の上に成り立つもの。コミュニケーションをスムーズに進めるために、心理についても知っておけば便利です。現役の精神科のお医者様が書かれた本です。
ロスジェネって何?
ロスジェネとは、ロストジェネレーションの略語。
本書で出てくるロスジェネ世代とは、1970年代~1980年代前半に生まれた人たちのことです。私もこの世代に当てはまります。テレビ、ビデオ、ファミコン、エアコン、子供部屋、漫画と便利で楽しいアイテムがどんどん普及していった飽食の時代に育ち、受験戦争も戦ってきた世代です。そして大人になってから就職先がなかったという…。「モノ(金銭)にも恵まれないし、こころ(親密さ)にも恵まれない」という、子供のころ頑張った割に期待外れの今を生きている人が多いそうです。
私自身も当てはまる世代だけに、本書にはなかなか身に染みることが書かれています。それだけ核心をついているということでしょうか?「そして僕らはおっさん/おばさんになった」なんて見出しには、ドキッ。いつまでも過去の不遇を残念がっても仕方がないですし、私の場合はロスジェネ世代だったからこそいろんなチャレンジをして来れていると思います。例えばバブル世代でいい会社に就職できていたら、仕事を辞められず新しい仕事や人生の経験はできていなかったかもしれません。
結婚できない?しない?ロスジェネ世代とその後の世代
2010年の国税調査では30~34歳の男性の未婚率は48.8%、女性は35.7%。確かそのうち交際相手のいない人のパーセンテージも結構高かったとどこかで読んだ記憶があります。
周囲を見ると子供連れのとても若い夫婦がいっぱいですし、この結果には驚きです。
そしてここでは結婚できない理由は、経済的なものによるところが大きいとあります。ロスジェネ世代は、バブルの経済観念や恋愛観念を知っているだけに、それが達成できない葛藤もあるのかもしれません。
そして今は、「こういう人を好きになったけれど、どうすればうまくいきますか?」という悩みを持つ人よりも「どうすれば異性にもてますか?」と相談する人が多いのだとか。
著者の先生によると、現代の男女関係の最大の問題は「私が愛されたい」「私を幸せにしてほしい」と男女とも受動的。相手がどんな人で何をしてくれるかではなく、「自分がどんな人で何をしてあげられるか」が大切だと書かれています。確かに。
この辺りの恋愛模様に見る心理はとても興味深く詳述されています。ご興味がある方は読んでみてください。
コミュニケーションスキルと心理
SNSの普及のせいもあり「見たいものしか見ない」「見せたいものしか見せない」人が増えているー。
でもそれでは困ることがあります。困らない人もいますが。
例えば著者の先生は、精神科医で患者さんとのコミュニケーションは仕事です。でも好きなアニメの話や病状についてだけの話では、精神科医の仕事がまともに務まらなかったそうです。
同じようなことは、多くの仕事に当てはまるのではないでしょうか。いくら優れた実務能力があってもそのベースにコミュニケーションのスキルがなければ、人としての信頼を得にくいと思います。
そこで提唱されているのが、「見たいのもしか見たくないコミュニケーション」ではなく、しがらみある程度引き受けて、中長期的な人間関係を作るコミュニケーション。「しがらみ」と聞くと嫌な感じですが、「見たいものだけを見る」その場限りの人間関係を繰り返すのではなく、人とのつきあいの面倒くささを若いうちから身に付けておいたほうがいいよ、ということです。
コミュニケーション下手の克服方法
とはいえ若いうち~が過ぎてしまった私たち世代。では、今どうすればいいのでしょうか?
コミュニケーションが苦手と感じている人はもちろん、得意と感じている人も見直したほうがいい点があります。コミュニケーションに苦手意識を感じていなくても、それは本人が気づいていないだけで実は一方通行になっていて周囲が困っているという場合もあるでしょう。
そこで、コミュニケーションを上達させるため、もしくは苦手意識を克服するためにできること、です。
・「身近な人にほんのちょっとだけ気持ちよくなってもらう」ことを心がける。
挨拶などの礼儀はもちろん、目の前の人が不快に感じないようにちょっとだけ気を配ろう、ということです。
当たり前と言えば当たり前、ですよね?でも「見たいことしか見たくない」コミュニケーションに慣れていると、かなり面倒くさいことに違いありません。
挨拶もマナーも身に付けていないのに高価な服を買いあさって、すぐ評価を向上させようと頑張った挙句に失敗してしまう人。こういった短絡的なものを追い求める人は、コミュニケーションだけでなく仕事のスキルアップも長期的なノウハウの蓄積が必要なことは苦手になりがちです。
私も自分自身をふり返り、小さな心がけから、コミュニケーション能力を高めていけたらと気づきました。精神科医のドクターらしい分析がユニークかつリアルな本です。ロスジェネ世代の方には特におすすめです。