「嫌われる勇気」で一躍有名になったアドラー心理学に基づく話し方の本です。
まずこの本、189ページあるにも関わらずとても読みやすいです。字が大きい、字がない部分も多い、図解もあり、薄い黄色で色付けもされているためだと思います。私は速読な方ということもあり50分くらいで読めました。とはいえ内容は薄くありません。私自身をふり返って反省し、参考になる部分がたくさんありました。タイトルに「アドラー流」とあるため、キャッチ―な話題に乗せている感がありもったいないなと思います。
私の専門は書くことですが、「伝え方」「話し方」というのはお客様と接するときに必要なのはもちろんですし、書く文面にも表れます。では、内容を見てみましょう。
アドラー心理学とは
最初のページでは軽くアドラー心理学について触れています。
アドラー心理学とはアルフレッド・アドラーという心理学者が唱えた個人心理学。自己決定性、目的論、全体論、認知論、対人関係論という5つの基本前提で枠組みされており、それらを基に日常生活の困難を解決するよう援助する「勇気づけ」を行い、共同体感覚を身に付けよう…といったところでしょうか。
「嫌われる勇気」も読みましたが、きちんと自分の言葉で説明することが難しいので、深く理解できていないのかもしれません。ちなみにこの本でも、この部分は図解で言葉による説明は省かれています。詳しく知りたい方は、「嫌われる勇気」まとめ記事を読んでみてください。
人間関係がうまくいかない人の10の特徴
見出しだけ見ていくと「そうだよね」と思うものばかり取り上げられています。マイナス思考、人と比べる、自分と違う人の考えを受け入れられない、など。でもじゃあ、実際にどういう言動が見出しのことかと、私が「あ、それ私してる」と思ったようにあなたにも当てはまることがあるのではないでしょうか?
・「人の話を聴くのが下手」
私は特に人の話を聴くのが下手だとは思っていませんでしたが、人の話を遮ることはあります、人の話を最後まで聴いているようで聴いていないことがあります、自分と異なる意見には耳を傾けないこともあります。それは下手ということなのです。もちろん話し相手にもよりますが、近しい人の話は特に聴いていない自分が分かりました。
・目の前の相手〇〇さんに「〇〇さんは、いいよね」
私は無意識に言っていました。この言葉は自分が劣っていることをアピールして相手に気を使わせてしまっているのだとか。自分が劣っていることをひけらかして人生で取り組まなければならない課題から逃げている…。耳が痛いです。
・「コミュニケーションは勝ち負けだと思っている」
私は主人が理系で議論好きなところがあるので、いっつも理論で言いくるめられて負け感を感じていました。「この話では議論を求めてなくて、ただのコメントなんだけどっ」とキレることもしばしば。これは、相手の意見に従ったり、自分の意見が通らないと負けだと思ってしまう心理。話し合いで問題を解決するという目的を見失っているのは、共同体意識がなく縦のコミュニケーションをとり続けているからなんだとか。
ふとスペイン生活でのことを思い出します。誰も人の話を聴いてません。人の話を語末まで聴く人なんていません。今話している人より大きい声で話してかぶせて聴かせる…。書いていてちょっと恐ろしいけれど知らず知らずのうちに私も習慣になっている部分があるはずです。
人間関係がうまくいく人の18の法則
この項目も見出しだけ読んだら「そうだよね、納得」と思います。
・「相手の感情に振り回されない」
・「相手の失敗やできなかったことも受け入れる」
・「相手をコントロールせずに自分が変わる」
これがなかなか簡単にできないのが難しいところ。しているつもりでも周囲の人からはそう思われていなかったり。でも、人としてこうありたいと思う18個の法則か書かれています。
どんな相手にも伝わる言い方 9つのポイント
ビジネスシーンにはもちろんプライベートも「言い方」1つで結果は変わってくると思います。特に気になった点は「ほめるより、勇気づけをする」。褒めるというのは上から目線だけど、「勇気づけ」は横から目線。相手と本当の信頼関係を築きたいなら、横から目線で物を言おうということです。では、誉め言葉にはどんなものがあるかというと
・えらいね
・ ~ができてすごい
・さすが
・やればできる
・この調子で頑張って
「やればできる」「この調子で頑張って」などはなんとなく上から目線だと分かりますが、「~ができてすごい」「さすが」は、まさか上からとは思わず言っていました。一方勇気づけの言葉というと
・「〇〇さんの努力が実って、私も嬉しい」
・「~してくれてありがとう。とても助かった」
・「うまくいって、本当によかったね」
など。誉め言葉より愛が感じられるような気がしなくもないです。
「私」を主語にして意見や気持ちを伝える
「あなたが〇〇してくれたら助かる」ではなく、「私はあなたに〇〇してほしい。~だから」
確かに、こう言われたら嬉しくて断りにくい気がしますね。
感情「で」伝えるのではなく感情「を」伝える。感情的になって話すのではなく、悲しい、困った、不安などの感情を冷静に伝えることがポイント。
「なんで私がこんな評価なんですか」ではなく、
「一生懸命頑張ってきたので、この評価を見てとても悲しく思いました。理由を教えてください」
目から鱗です。怒りが込み上げている場面でもとにかく冷静にならなければ、このような言い方はできませんね。
まだまだ参考になった点はあります。夫婦の会話の例えも我が家にも当てはまります。この本では、とにかく相手に寄り添う気持ちが大事。でもそれは気に入られようとして自分を殺すのでもなく、お断りやお願いは簡潔にダイレクトに言いましょうとアドバイスされています。言い方1つで、事が思わぬ方向に展開してしまったり上手くいったりするもの。読んで納得するだけでなく、実行してみて価値があることが書かれていると思います。